短信  (民主化は民死化?)

hippydonky212005-10-13

イラク問題に関わるフリージャーナリスト志葉 玲氏のブログ「シバレイのblog」より
http://reishiva.exblog.jp/

イラク民主化、「民主国家」の民主化

 ブログ読者の皆さんにはご存知の方もいるかと思うが、今週末15日、イラクでは、新憲法草案の国民投票が行われる。
 
 憲法起草にあたって石油利権の扱いや、イスラム国家化、女性の人権などで各派が対立していることは、日本の報道でも伝えられたが、この新憲法案にはもう一つ重大な問題があることはご存知だろうか?

 新憲法案の中で唯一、削除された条文がある。それがこれ↓だ。

 「全ての個人はこの憲法の趣旨と規定に反しない限り、イラクの締結した国際人権上の条約及び規約に言及された権利を享受する権利を有する」                              ―イラク憲法草案第44条

 米軍に訓練を受けた民兵組織が、イラク移行政権の治安部隊に組み込まれ、「テロ対策」の名の下で手当たり次第に「疑わしい」市民を拘束し、残虐な拷問を行っていることは、FRIDAYの記事でも書いた通りだ。新憲法案から44条が削られたということは、今後も現在行われているような非人道行為がイラク政府の手によって行われるだろうことを意味する。

 「44条の重要さとこれが失われることで何が起きるのか、我々は声を上げなくてはいけません。ところが、国連は44条を除いた憲法案を成立させ、(市民に配るため)印刷しているのです」

 イラクへの支援を行うNGOの調整委員会"NCCI"のサイトには、あるイラクNGO職員の嘆きが掲載されている。「新憲法草案の起草作業は、国際社会の監視と協力の中で行われたハズなのに」「一夜にして44条が削られることが決められても、誰もそれを問題にしない」と。何故44条は削除されたのか。匿名で憤りをつづるイラクNGO職員は「国連に強い圧力がかけられた」ことを示唆する。


44条の削除の真相は結局「藪の中」ということになってしまうのかもしれない。だが、一つ確かなことは「独裁者サダムは去った。だが、次のサダムが現れるだろう」という、イラクの人々の不安は、既に現実のものとなっていること。そして、国際社会が見せかけだけの「イラク民主化」に対して、無責任にも拍手し続ける限り、悪夢はこれからも続くだろう、ということだ。

 多分、来週明けにはブッシュ大統領は「イラク民主化の道を着実に歩んでいる」とでも演説し、小泉首相や日本のメディアも賛美することだろう。今年1月末にイラクで行われた国民議会選挙を「成功」と賛美したように。選挙実施を口実に、ファルージャでは無差別虐殺が行われ、街の建物の9割が破壊され、殺された人々の遺体から出る腐敗臭は、近郊の村々にまで届いたというのに。主にイラク中部・西部で、選挙当日直前まで米軍の掃討作戦が行われ、西部のアンバル県では投票率はわずか2%だったというのに。

 今回の新憲法案の国民投票も、有権者が殺されるか、銃弾が飛び交い投票にもいけないという「民主的」なものになるようだ。今月に入ってから西部アンバル県では、"Iron Fist"だの"River Gate"だの
"Mountaineers"だの既に3つもの米軍等による大規模軍事作戦が行われ、1万5000人投入されたイラク国家防衛隊はなおも掃討作戦を続行するのだという。

 …やれやれ。いつも思うんだが、「民主化」だの「民主的」だのが何か解らなくなっているのは、我々「民主主義国家」側の人間なのかもしれないね。日本の国会を見ても、共謀罪とかワケのわからん法案が先の国会で廃案になったのにも関わらずシツコク今国会に上程されているし…。 

国連に強い圧力をかけたのは当然「国連ビルの上10階は不要だ」と語ったアメリ国連大使ボルトン氏だろうね。ネオコン民主化構想は、アメリカに対して都合のいい民主政権の成立という意味だから、それはかつてのような個による独裁から、集団による独裁に看板を付け替えただけの事。かつて開発独裁って言うのが独裁者やその信奉者のいいわけだったけど、今度は民主的選挙といういいわけが一人歩きするのか。人権に裏付けされない民主化など文字どうり字面だけでしょうに。



共謀罪にも小泉チルドレンが無批判に賛成するのでしょうね。しっかり投票行動を見ておきますぜ。
共謀罪反対」バナーをid:D_Amonさんから拝借。