3月7日の中日新聞の中日春秋より

 二〇〇四年の夏休み。キャンパスの真向かいで、外国人が座り込んでいる。いったい何ごとだろう。その疑問が出発点だった▼イラクの位置も知らないと揶揄(やゆ)される今どきの大学生だが、どうして、クルド難民の窮状を見かねて、救済資金づくりに自費出版の対話集を作りあげた学生だっている。青山学院大学雨宮剛名誉教授と経営学部一、二年生の有志▼本は『私たちどうして人間じゃないの? 怒りと慟哭(どうこく)』と題し、A5判、百四十ページに、国の対策の遅れを鋭く告発する難民たちの証言と対話録を収めて、関連資料も添えられている。学生たちを指導した雨宮さんは「十九、二十歳の若者たちのまことに豊かな感性と心温まるヒューマニズム、健全な精神を見直しました」と感動している▼東京・渋谷の青山学院大キャンパスの向かい、国連ビル前に座り込んでいたのは、国連難民高等弁務官事務所UNHCR)が認定した「マンデート難民」で一月十八日にトルコに強制送還されたクルド難民のアハメット・カザンキランさんら二家族だった▼九月、雨宮クラスは後期授業の最初にカザンキランさんらを招く。訴えを聞いて学生たちは大きな衝撃を受けた。対話の後、「教えられれば私たちにだってわかる」「問題に立ち向かう若者のパワーを信じて」と感想を寄せて、直後から学内や街頭での署名活動に入った▼年が明けて、難民の強制送還が始まると、雨宮さんは残る難民の救済資金に対話集の緊急出版を思いついた。本の連絡先は電話とファクス042(771)3707。

かつてノンポリでどうしようもないキャンパスでならした青山学院(かつて村上春樹にさんざん揶揄された)の学生もキャンパスの目の前で繰り広げられる女性や幼子の座り込みには目を背けずにいてくれたようです。それでもやはり座り込む人たちを路上に放置されたゴミのように無関心で通りすぎる大多数の学生はキャンバスで何を学んでいるのでしょうか?