短信  (効率化って言葉に従いたくはないんです)

hippydonky212005-08-12

asahi.comより
民主党は11日、衆院選のスローガンを「日本を、あきらめない。」に決めた。マニフェスト政権公約)や選挙用ポスターに盛り込む。岡田代表は「小泉さんの4年間で、希望のない日本になった。政治がしっかりと決意してやれば間に合うという思いを込めた」と語った。

 岡田氏は「(スローガンは)私自身のことでもある。12年前に自民党を出て、非常に厳しい野党の道を歩んできた。政権交代ある政治を作るという信念があったから今日まで頑張れた。そのことも踏まえて『日本をあきらめない』とした」と述べた。

僕にだってあきらめたくはもちろんありません。でも・・・。


1998年のフジテレビのドラマにWITH LOVEというのがありました。もうかなり古い話ですね。内容はメグライアンとトムハンクス主演のアメリカ映画「ユーガットメール」の日本のドラマ版と思っていただいて結構です。田中美里演ずる銀行の窓口の仕事をするOLと竹野内豊演ずる同じビルに事務所を持つ売れっ子CM音楽家との偶然のメールのやりとりから始まった恋物語です。内容はさておき、銀行のOL村上雨音(あまね)(田中美里)の性格付けのシーンにこんなのがありました。
客でにぎわう銀行内。雨音の前にはおしゃべりなおばあさん(内海佳枝?)。用事が終わったにもかかわらず世間話を続けようとするおばあさんにつきあう雨音。しかし後ろの席の上司が雨音を呼びつけ、仕事以外の話をしないように命ずるわけです。
とぼとぼと帰るおばあさんと見送る雨音。
またおばあちゃんの娘が無断におばあちゃんの定期を解約しようとするのを心配したり、老人ホームへ行くと告げにくるおばあちゃんを追いかけたり・・・。
雨音の他人思いの優しい性格付けのための描写を視聴者はどのように受け取ったでしょうか?


私的な話です。先日郵便局へ振り込みに行きました。よく行く郵便局は貯金、振り込みの窓口が2つ、職員は3人の特定郵便局です。いつもかなり混み合っています。ひとりの70はすぎているだろうおばあさんが窓口の一つで若い女性の局員さんと話しています。用事は終えたようですが、何かの手続きのことで聞いているようでした。窓口一つ独占状態です。しかしもう一つの窓口でてきぱきとさばいていたのでまあ待つ皆さんも気にしてはいないようでした。しかし面倒な手続きがあったのでしょうか。もう一つの窓口も止まってしまいました。まあしょうがないかと思っていたのですが、僕の後のおばさんが窓口を占領するおばあさんに向かって「後でしてよ」と非難の矛先を向けました。おばあさんは深く頭を下げ帰って行きましたし、窓口の女性は立ち上がり申し訳ありませんと頭を下げていました。非難したおばさんは平気のようでしたがほかの人たちは皆ばつの悪そうな顔をしていました。
実はその前の日実家に帰ったとき、母親に1枚の書類を示され、聞かれたことがありました。どこに署名をして郵便局に持って行けばいいかと。僕は場所を教えながらこう言ったことも忘れません。
「そんなもの郵便局へはんこだけ持って行けばどこを書けばいいか教えてくれるから」と。
そうです。僕たちは皆窓口の人に過剰なサービスを求めていることを気がついてしまったわけです。郵便局の効率化を求めながら。
僕の行くUFJ銀行は窓口に5分以上お待たせしませんとわざわざ書いてあります。くだんのおばあさんなら相談窓口に押しやられ、母親はめんどくさそうに教えられ、書いてから再び並んでくださいと言われるでしょう。


僕がドラマを思い出したのは、視聴者はたぶん雨音の味方にたち、上司を非難したでしょうとやはり思うからです。しかし現実の僕らはせかせかと時間に追われ、窓口のじゃまものに迷惑顔をするでしょう。窓口の女性が雨音ようであってほしいと願いながら。


経済の合理化や効率化を求めれば郵政民営化は必然なのかもしれません。しかしスローライフの実践が本になるいま、必要以上の効率化は求めたくはありません。郵便局の窓口にはほほえましい会話が残ってほしいと願っています。


役所の効率化のもっとも先験的なものであったはずの住民票の電子化は本当に役所に効率化をもたらしましたか。相変わらず窓口は混雑し、コンピューターの維持費に毎年何百億の経費が消えていきます。それこそ天下りの場所を提供したにすぎません。
JR西日本の事故で公共部門の利益構造の危なさを知りながら、その非難の舌の根も乾かぬうちに郵政民営化と口に出すことができる自分をもう一度見直してみてください。
そして郵便局の民営化とセットをなすように障害者自立支援法がでていたことを忘れてはいけないでしょう。効率化と財政赤字をお題目にして、弱いものにしわ寄せする社会のあり方を本当に求めているのでしょうかと。高齢化社会に、医療費の高騰。年金問題も抱えているのに、念仏のように唱えられる大きな政府と小さな政府という中身のない対立も、内容を自らが考えることはなしには答えなど出ないでしょうに。言葉に酔いしれ、思考を停止をしたくはありません。



今一度生活感に密着した視点を取り戻してみようと思いました。財投の出口論や国債の引き受けなど郵政の民営化とは切り離しても考えられるものは今ここで論じる必要はないでしょう。郵政の民営化が小さな政府の基本だとお考えなら、アメリカはまだ大きな政府なんでしょう。銀行は支店の統廃合でコンビニか買い物ついでのスーパーのATM。自動車税の払い戻しに半日使いました。簡易保険の民営化が小さな政府だとお思いならアメリカンダイレクトにでも加入してください。独立採算の公社なら規模が小さくなればいずれなくなります。それより県民共済の方が安いですよ。ああこれも官製か。